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「一億総監視社会」への一歩を許すのか!

 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「組織犯罪処罰法改正案」の国会審議が、衆議院で重大な局面を迎えようとしています。

 

 この法案は、過去3回国会に提出されましたが、いずれも厳しい世論の反対により廃案となったものですが、今回、政府は、2020年の東京五輪に向けたテロ対策の必要性を前面に押し出して、従来の「共謀罪」との罪名も「テロ等準備罪」に改め、「国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結できなければ東京五輪を開催できない」とまで安倍首相はうそぶいてきました。

 しかしながら、TOC条約を結ぶ187の国・地域のうち、締結に際して国内で共謀罪を新設したのはわずか2国だけで、共謀罪がなくとも条約締結できることが明らかになっており、しかも、日本政府はこれまでに、国連のテロ対策関連条例のうち主要な13本を批准し、日本の国内法ではすでに57もの重大犯罪について「未遂」よりも前の段階で処罰できるように整備されているのです。

 また、TOC条約は、もともとテロ防止目的の条約ではなく、マフィアなどの国境を超える組織犯罪集団の犯罪を防止するための条約なのです。よって、条約本文には「テロ」という言葉はありませんし、そもそも「この条約はテロ対策のためのものではない」と重大犯罪リスト化に反対したのは日本を含む先進諸国だったと言うことです。

 こうした、国連における条約起草段階の経過などは一切説明することなく、テロ対策に名を借り、国民の関心が高い「東京五輪開催」とも結びつけ、あたかも従来の悪名高き「共謀罪」とは別のものであるかのような印象を、国民に植え付けようとするイメージ操作以外の何物でもないでしょう。

 

 民進党は、これまでの国会審議で明らかになった本質的な問題点として、①テロ対策のために現行法に加えて「テロ等準備罪」を創設する必要性は乏しいこと、②「準備行為」の定義が不明確であり、「共謀」との境界が定かでないこと、③「組織的犯罪集団」は可変的なものであり、一般市民が属する集団であっても捜査、検挙の対象になり得ること、④「テロ等準備罪」の捜査手法が不明確であり、将来的に通信傍受や監視型捜査の拡大につながりかねないこと――等を指摘したうえで、「TOC条約締結に共謀罪は無用」「包括的で不明確な共謀罪に反対」「テロ対策は個別具体的な立法で対応」との見解をもとに、独自の「テロ対策強化法案」を共謀罪とはまったく別次元の法案として提出しています。

 

 あわせて、過去三度廃案になった所以であり、根本的な問題点である、①一般の企業や労働組合・市民団体などが捜査の対象となりうる懸念、②実行準備行為が拡大解釈される恐れ、③行き過ぎた捜査手法により基本的人権が侵害される可能性が高いこと――などの疑念は、これまでの国会審議では全く払拭されていないということも指摘しておかなくてはなりません。

 

 暴走を続ける安倍政権の4年余りを振り返ったとき、特定秘密保護法、安保法制、そしてこの「共謀罪」さらには「新憲法2020年施行発言」等々、一連の象徴的な動きの底流にあるのは「言論統制」「思想統制」に通じる、ある意味での「戦前回帰・歴史修正主義的」な右翼的発想が如述に表れていると言えるのではないでしょうか。そんな危機的状況を憂う国民は多いはずです。

 「一億総監視社会」につながりかねない、極めて深刻な問題をはらんだ「いわゆる共謀罪」。日本維新の党を取り込んで若干の修正に応じたうえで、今週中(~5/19)の衆議院での強行採決も取り沙汰されていますが、こうした動向に強い関心を持って注視するとともに、本法案の本質を見極めた上で、歴史上の過ちを繰り返さないためにも「共謀罪反対」の声をあげ続けることが鋭く問われていると言えるでしょう。

 

 最後に、すこし大げさな話と受け取られるかもしれませんが、ある識者が共謀罪に対して、以下のような警鐘を鳴らしているので紹介しておきます。

 『共謀罪の真に恐ろしいところは、成立するだけで国民・市民に著しい「萎縮効果」を発揮する点だ。反政府の立場のデモや運動が捜査対象とされ自粛ムードが広がるだろう。メディアも「組織的犯罪集団」とみなされないために、政権の意向をより一層忖度するようになるだろう。加えれば、居酒屋で一般人が政府批判をすることや、SNS上のやりとりですら「共謀」の対象とされかねないため、一般市民のレベルでも言論や表現の萎縮が起こる。そして気がつけば、誰もお上(権力)に逆らえない。北朝鮮のような言論統制社会になってしまうのだ』

 『共謀罪は公権力による恣意的な運用がなされる危険性を多分にはらんでおり、それが「平成の治安維持法」と呼ばれる所以でもある。このまま成立すれば、理不尽な逮捕と苛烈な拷問の横行した戦時体制下の治安維持法時代が、再びやってくる可能性は高いと言わざるを得ない』